歴史と思いをさらなる次の世代へ…古民家再生住宅|施主邸ルームツアー(前編)

ちょっとした箇所にこそおもてなしの心を忘れない

正田さん

お客様をお迎えするのに竹筒でお花を生けてくれてたりと、なかなか粋な感じですよね。
こちらが玄関で、もともと土間だった場所を玄関にさせていただきました

正田さん

玄関の中の柱は、隣の長屋と繋ぐのに梁が一本通ってまして、ちょっとスパンが飛ぶというのでここに柱を一本入れて補強してあります。
これ実は他と違う、松の柱を使っています。意外といろんな木を使っているんです

もし家編集部

目で見ても素材感が全然違いますね

正田さん

この辺りが欅で、一段上がる階段のようなもので式台と言います。これが框(かまち)ですね

欅を使った式台と框

もし家編集部

木を変える要因ってなにかあったりするんでしょうか?

正田さん

式台とか框というのは一般的に欅とか松が多いんですけど、毎日上り下りするんで硬い木を使ってあげる方が傷みが少ないかなと

もし家編集部

適材適所に変化もつけるんですね

正田さん

玄関入って右側の足元にあるのが桜の木です。うちの大工がちょっと遊んで色々使ってます

優しい手触りと色味が特徴の桜

もし家編集部

色味も少し違いますね。薄い色で肌触りもツルツルした感覚で

正田さん

そうですね、目が優しい。
うちの倉庫がワンダーランドみたいになってるので、職人が色々見つけて「これ使おう あれ使おう」って言いながら
幅とか長さも色々ありますので、工場で材料を持っているとね、そういう発想を色々しながらやっていくような感じですね

もし家編集部

工場で加工して現場に持ってくるんですね

正田さん

下駄箱もうちの大工が作りました。
式台とお揃いの欅の下駄箱です。
舞良戸(まいらど)といって杉の板をして桟を組むやり方をしてます

細やかな職人技が光る造作の下駄箱

もし家編集部

間隔だったり細かい部分も職人技が感じられますね

正田さん

意外と建具も軽いんですよ。すべて造作ですね。
昔は竹滑りと言ってコマがなかったので、竹の上で建具を滑らせるんであんまり重い建具だと重くなるというので、建具を軽めに作るという日本の引き戸の文化ですね

もし家編集部

収納力もバッチリですね!さすがです

正田さん

玄関からお客様をお迎えするというスペースをお施主様が作って欲しいということで、お花とか季節のもの、日本には節句が季節であるので兜とかお雛さんとかを飾れる棚を作らせてもらいました

来客を出迎えるおもてなしのスペース

もし家編集部

障子を開けるとまた雰囲気も変わりますね

正田さん

もともとここは北側で外に建物があり暗さもあったので、減築をした場所です。風通しと光が入るようにということでね。南だと直射日光が入ったりするんですが北からの光というのは安定した光で、優しい光が入ってきますので。
こういう障子を入れて飾りのスペースを設けてあげるっていうのは、日本人の心みたいな感じですね

天井も扉も木のぬくもりをそのままに

正田さん

トイレですが、玄関から近いこともあるんですが寝室からも近い方がいいということで、この位置にさせていただきました。
下駄箱と同じ軽めの杉の板戸を開けますと、奥行きは深めに作っています

正田さん

柱とか梁を見せて天井板もそのままの木を使っています。
お客様が来られた時に手洗いをできるように、最近だったらこういうボウルや備前焼とかいろんなボウルがありますのでそれに水栓をつけて。
これ結構貴重な板なんですよ、花梨の板なんですけど

深いブルーのボウルと花梨の板で和モダンの雰囲気

もし家編集部

そうなんですか!

正田さん

今この幅の花梨というのはもうなかなか手に入らない。
実はうちの会長が若かりし頃に倉庫一個分買っていて、もう忘れ去られてた逸材なんです

もし家編集部

それを贅沢にこちらに使われたんですね!
肌触りもすごくいいですね

正田さん

色味も上品なのと硬めで。生の花梨だとすごく反ったりするので使いにくいんですけど時間も経っているため良く乾燥しているので。
ちょっとした収納とかもお施主様が使われるので、収納も大切ということで作りました

もし家編集部

細部まで使う人の気持ちを考えて作られているんですね~

正田さん

細かいところですが、日本の引き戸の文化ってお話をしましたけど、普通は引き戸にする場合、柱の部分に建具が来るんですよね

正田さん

でも今回のケースは強度的にこの柱は動かすことができないため、上に建具の枠を浮かせたように付けていて、枠に引き戸が入るようになってます。こうすることで柱を残しつつ引き戸にできる。そういう工夫をしながらご提案させていただいてます