現代の暮らしに合わせた古民家再生住宅｜古民家再生見学ツアー（前編）

こちらがダイニングキッチンです。
最近は対面式キッチンが多いと思うのですが、ダイニングスペースを少しでも広く取れるように、壁付けキッチンになっています。キッチンで作って後ろを向くだけの動線ですぐに料理が出せる形です。
古民家の場合は間取りが決まっていることが多いので、6帖あるこの幅で対面式にしようと思うと、キッチンがかなり小さくなったり、柱が抜けないこともあるので、制約をうまくクリアしながらこの形になりました

お施主さんも「窓から表にある庭木を見ながら料理をするのが楽しい」と言われていましたね

そうですね。こちらのお施主さんは、景色や風通しの要望と、できる限りシンプルに使いたいということだったので

築は145年で、リフォームしてから今年で10年です。

そうですね。大切に使っていただいてうれしいですよ

こういう建物は10年経っても飽きがこないんです。古くなっている感じではなく、味が出てくるんですね。そちらの扉も建てた当時は白っぽい色だったんですよ

古民家の梁と合うような雰囲気に色が落ち着いてきました。この扉、実は食器棚が入ってるんですよ

目線を遮れるようにね。最初はガラスにする案もあったのですが、古民家の雰囲気に合うように「舞良戸（まいらど）」というスギの板戸を桟に組んだ扉をつけました。古民家とか昔のお家では軽くて使いやすいので建具で使われていることが多いです

お施主様もすごく気に入っておられましたね

こちらは台所続きのリビングですが、リビングといっても畳です。昔の客間だったところを台所からつなげています

玄関の大引天井は手が届くような高さだったんですが、他の部屋の天井に比べても客間になると急に天井が高くなっています。

多いですね。昔は冠婚葬祭などで舞を踊ることもあるので客間は天井高が高いんです

プラス、天井材や床の間があったり、客間には良い材料が一番使われているのが古民家の特徴です

リビングは8帖あって、このまま縁側と外につながります。窓から約1mぐらい庇・軒が出ているので、岡山の太陽高度が夏場で79度なので、ほぼ直射日光が入ってこない。寒い季節になると、中央のこたつあたりまで光が入って暖かいんです

昔の古民家は断熱材がないですから、四季を利用して日を入れたり遮断したりして温度調整をしていたんですね

昔は古民家とか和風の家は、客間と、二間・三間続きで畳のお部屋があって、家族の部屋は暗くて寒いところで一番いいところが客間というのが多かったんです。
でも、現代的な使い方にしようとなった時は、客間の場所をリビングにするのはどうかと提案するようになりました

そうですね。広さもそうですし、日の入り方とか、庭が見えるとか、色々な面で最適なスペースが客間ですね。通常でいうと畳の客間を壊して全部リフォームする発想をしがちですが、元々の客間を生かしてリビングにしてしまう。今回は畳のままですが、板の間でも大丈夫です

そうです。畳だったところを板の間に変えています。板の間にして、古民家の雰囲気とソファって意外と合うんです

そうです、縁側を無くして広くしました。
そして、何度も出てくる大引天井ですね（笑）

建具が入って縁側になっていましたが、6帖の部屋と縁側部分が1帖半なので、合わせて7帖半の部屋になっています

縁側の建具が入っていた鴨居と長押部分を取ってしまって、一つの部屋のようにすればいいんですけど、やはりこれも構造躯体なので、このままですね

リフォームでも柱などの構造を隠して見えないような仕上げをしてしまう方が、技術的にもやりやすいんですが、残しながらやるのは簡単なように見えて結構難しいんですよ