築60年・職人技術の粋が結集した家│古民家再生見学ツアー(前編)

補修かやり替えかを見極めるプロの目

初谷

これは元々の壁でしょうか?

正田さん

そうです。土壁ですね。蔵なので、柱の外に土を塗っているような構造になっています

初谷

これはもう、このまま生かせる状態なんですか?

正田さん

そうですね。落ちているところは一部補修をして、あとは戻してあげるような予定になっています

初谷

素人目には壁材が割れたり落ちちゃったりしているのを見ると、生かすのは難しいなと思ってしまうのですが、使えるんですね

正田さん

そうですね。これは表の仕上げが落ちてきているだけなので、表面を落としてきれいに塗りなおしてあげれば使えます。すごく傷んでいるように見えますが、柱の本体自体が傷んでなければ、補修できますね

初谷

これは素人ではわからないですね

正田さん

補修はできますが、あんまりこの状態でずっと置いておくのは良くありません。例えば水が外壁が剥がれた部分から入ってきますと、外壁はどんどん落ちてきますので、早めに対処するのが大切です

初谷

壁は実際に見て、補修でいけるか、やり替えるかを判断するのでしょうか

正田さん

現地で見て判断しますね。今回のケースでしたら、これは上塗りだけで大丈夫だろうということですね

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大黒柱から家中に繋がる伝統的構造躯体と補修技術

初谷

柱が一般的な住宅とは違う構造になっているのですが、どういう状況になっているのでしょうか?

正田さん

今でしたら基礎の上に土台が乗っているんですけど、こういう古民家っていうのは石場建てと言いまして、石の上に柱が乗っているっていう状態です。
やっぱり雨で水が来たりすると、この小口の方から水や湿気を吸って、シロアリが来たり、腐朽菌が発生して傷んできたりして、大体足元が傷みやすいっていうのがあります

初谷

柱を残すのか入れ替えるのかなど、やり方はいくつもあるのでしょうか?

正田さん

はい。重要な柱で残したいなっていう時などは、途中から傷んでいる部分を切って、途中から接ぎ合わせるような、そういうこともできますね。この辺りは、やはり外壁周りの柱は入れ替えた方がいいだろうということで、新たに基礎を作ってやり替えています。やっぱり柱が傷んでいると、下も大体傷んでいることが多いですからね

初谷

なるほど。
これが接いでいる状態ということですね

正田さん

そうですね。これは、この古民家の大黒柱になるんですけれども、足元が傷んでいたっていうのと、床を少し下げさせていただいたので、それを足すためにここで接いでおります。実はこの柱自体は地松の大黒柱でして、下をケヤキで接いでいます

初谷

別の木でも接ぐことは可能なのですね

正田さん

できます。大黒柱は一家の大黒柱と一緒で大体家の中心にありまして、大体四方から梁がささって来ていることが多いです。大黒柱というと大体五寸以上、15センチ角以上になりますので、なかなか交換するっていうのは難しく、途中で接ぎ替えたりするっていうのも高い技術が必要になってきます

初谷

古民家再生ではよくあることなのですか?

正田さん

よくありますが、木と木をうまく接ぐとなると、技術ある職人さんじゃないと難しいですね

初谷

相当技術や経験が必要になるように思いました

正田さん

もちろんそうですね。ボルトやビスで留めないとなると、込み栓(こみせん)や車知栓(しゃちせん)などという木の栓を入れたりしながら留めて、ほぼ一本の柱のようになって動かないんです

初谷

そうすると、ボルトよりも強いんですね

正田さん

やっぱり木と木は相性がいいですから

正田さん

これが構造躯体と鴨居を兼ねている『差鴨居』という部材になります。太い梁に溝を彫っていまして、建具が入るようになっています。昔のお家でいうと、高さが1750ミリとか1730ミリとかでちょっと低めに設定されていますので、お施主さんからよく「切ってください」と言われる部材なんです。でも、これは構造躯体になっているので、切っちゃいけないんですよ。ただ、こちらはシロアリにやられていましたので、うちの職人の技術で直しました

初谷

構造躯体になっているかいないかは重要な確認ポイントですね

正田さん

そうですね。それからさっきお話していた、石場建てになっていますので、重要なのは床を繋ぐということです。柱から柱までを繋いている構造躯体になっていて、敷居のレールが引いていたりする部分があったら、それは『差敷居』といいます

初谷

それも先ほどの差鴨居と同様で構造躯体になっているんですね

正田さん

そうですね。古民家にとってはすごく重要な構造躯体です

初谷

そのような知識なく、簡単に切ってしまうと大変なことになりますね!

正田さん

そうです。買われる方やお施主さんもそういうのを知らないままに切って欲しいというので建築屋さんがハイハイってやってしまうと、後から大変なことになります

初谷

そういったポイントをしっかり見て、使えるものか、どれぐらい改修費かかるかを考える必要がありますね

正田さん

そうですね。屋根がしっかりしていれば、古民家としてはいい建物になります

初谷

やっぱり一番見るのは、まず屋根ですね

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