築100年・職人技術の粋が結集した家│古民家再生見学ツアー(前編)

現代建築のみならず、高い技術力が必要となる伝統的な建築工法にも精通している、なんば建築工房。今回は、なかなか見ることのできない古民家再生の現場を「もし家」編集部が見学!同社の正田社長に案内・解説をしてもらいながら伝統建築の素晴らしさ、そして職人さんのすごさを目の当たりにしてきました。動画と記事でぜひご覧ください!

取材日:2020年8月22日

正田さん

【今回の社長さん】
なんば建築工房の正田です。
古民家再生というとハードルが高いイメージがあると思いますが、大事なのは古民家選びのポイントをきちんと押さえておくこと。丁寧に解説いたします!
ぜひ古民家の良さをもっと広く知ってもらいたいですね。

まずは古民家再生の費用・技術・見極め方から知りたい方は >> こちらから!

古民家選びのポイントは『建物の雨漏れ』

もし家編集部

今日見学させていただくこの古民家、建築されてからどのぐらい経っているんですか?

正田さん

この古民家自体は築60年ですが、実はこちらのお施主様の一族は100年ぐらい前からこの地に住まれています

もし家編集部

100年もですか!
今回はこの建物を改築して、また住みやすくするということですか?

正田さん

そうですね。お施主さんはここで生まれ育って生活してこられたので、100年後もこのお家を引き継ぎたいという思いで、当社にご依頼いただきました

もし家編集部

今回は、移住や、古民家に住みたいなっていう要望や思いを持たれている方が結構多くいらっしゃると思いますので、そういう方に古民家はこういうところを見た方がいいよ、などのお話をお聞かせいただければと思います。

早速伺いたいのですが、古民家を見る時に見ておきたいポイントを教えていただけますか?

正田さん

第一のポイントは、建物自体の雨漏れですね

もし家編集部

雨漏れを確認するポイントとなると、屋根ですか?

正田さん

はい、屋根の他にも、外壁と床下も確認していただければと思います

もし家編集部

基本的にはその3ポイントを見るということですね!
逆にこんな物件、絶対やめた方がいいっていうのはありますか?

正田さん

建物がちょっと斜めになっているとかですね。
あと、よく僕らが見に行って、「え!」って思うのは、裏庭や横が繁っていて、森に覆われているような古民家です

もし家編集部

結構幻想的だなと思ってしまうのですが、それはやめた方がいいですか?

正田さん

絶対やめた方がいいってわけじゃないですが、基本的にはやっぱり生い茂っている敷地は建物が傷んでいる可能性があるんですよ。日当たりも悪いですし、シロアリも来ている可能性が高い

もし家編集部

湿気も多くなりそうですね。
そういうところはやっぱりプロに見てもらわないといけませんね!

正田さん

そうですね。最終的にプロには見てもらった方がいいと思いますが、これから買われる方も自主チェックということで確認していただいた方がいいかなと思います

もし家編集部

少しでも見る目があったら、間違いが少なくなりますよね

改修前(写真提供:なんば建築工房)

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古民家再生の基本は『残せるところは残す、傷んでいるところは直す』

正田さん

ここから見えるのが1階部分の屋根なんですが、建物で傷みやすいのがこういう屋根部分ですね。実際に雨漏れがあった箇所です

もし家編集部

へえ、ここは雨漏れで腐っているっていうことでしょうか?

正田さん

そうですね。腐朽菌が出てきて腐ってしまうこともありますし、水がくるところにはシロアリも来ますので、そういう原因で傷むこともあります。それから、1階屋根と2階外壁の継ぎ目の部分も傷みやすい部分ですね

もし家編集部

こういう傷みっていうのは必ず起こるのでしょうか?

正田さん

基本的には、建物、外壁周りっていうのは劣化してきますので、起こりやすいですね

もし家編集部

こういう傷みがなるべく少ない家を選ぶ方が、当然改修費も安くなるし、いいということですね

正田さん

そうですね。こういう改修で一番お金かかるのは屋根です。その辺りがやっぱり費用が一番かかりますね。状態によっては屋根が悪いと、屋根の下地も悪いし、外壁も傷みやすいし、その下の床下もよくないということもあり得ます

もし家編集部

屋根から全部連鎖してくると。一番重要なのが屋根なんですね

正田さん

そうです。
ここは屋根が傷んでいましたので、下地からやり替えています。梁があって、その上に垂木という角材があるんですが、そこの傷みもあるので、垂木や下地の野地板というところから全部やり替えています

もし家編集部

こうなると、どこを残すかってすごく難しい判断ですね

正田さん

そうですね。大工がしっかり確認した上で、できる限り残せるところはしっかり残して、変えないといけないところはやっぱりしっかりと変えていくようにしています。今、いろんな古民家再生とか、リフォームやリノベーションが流行っていますが、やっぱり表面だけ直すっていうやり方が多いです。でも、基本的な構造躯体、下地になる部分をキチッと直さないと、今後30年、50年、100年保つ建物っていうのはなかなか難しいと思いますね

もし家編集部

ちなみにそういう知識があんまりないのに、リフォームをやっている会社も、実はいたりしますか?

正田さん

正直言うと、ありますね

もし家編集部

すごく怖いですね

正田さん

僕らもやっぱり提案するのは、表面上のことだけじゃなくて、中の部分です。やっぱり人間でもそうですよね。体はすごく不健康であっち悪い、こっち悪いって言っているのに、化粧だけビシっとしていい服着る(笑)。そういうことよりは、内側からきれいになる、健康になるのが大事

もし家編集部

なるほど!非常によくわかりました(笑)。
柱はこれ全部変えていらっしゃるのでしょうか?

正田さん

そうですね。建物が実はここにもう1棟あったんですが、減築をしております。昔の古民家は大家族で住むということで規模が大きくなっているのですが、今は一家族で住むケースが多いので、減築をすることもあります

減築前、母屋に屋根が重なるように建っていた別棟(右側)(写真提供:なんば建築工房)

もし家編集部

結構隣接して建物が建っていたんですね

正田さん

はい。ほぼくっついて建っていました。そうすると、屋根が重なり合って谷になる部分ができるのですが、そこがやっぱり雨漏れで傷みやすいポイントになるんですよ。
例えば、梁のところが白くなっている部分、ちょっとカビが生えているのが名残です。雨漏れしたところの下の外壁周りは、柱をほとんど入れ替えていますね

もし家編集部

隣接して建つ建物がある場合は、間の壁も確認が必要になりそうですね

正田さん

そうですね。屋根の重なる谷のところは一番水が集まる部分なので雨漏りしているケースが多いです。それからその他にも、南と北で言うと北側がやっぱり建物が傷みやすいです

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